「何度言っても、練習が足りない」 「空き時間にスマホばかり見て、次の準備をしてくれない」 「もっとお客様のためにできることがあるはずなのに」
エステサロンやネイルサロン、まつ毛サロン、美容室、利用室などの店舗の経営、ふとした瞬間に「孤独」を感じることはありませんか?
忙しくなって自分1人では手一杯。やっとの思いでスタッフを雇い「仲間が増えたから、これで楽になる」と思っていたのに・・・。
現実は「私のコピーが欲しいのに、全然違う人間が入ってきた」というストレスで、かえって疲弊してしまう経営者は少なくありません。
「私と同じ熱量で働いてくれない」
これは、スタッフを持つ経営者の9割が抱える悩みです。 もしあなたが今この悩みを持っているなら、少しだけ厳しい現実をお伝えしなければなりません。
その悩みは、スタッフを変えようとしても解決しません。
変えるべきは、スタッフではなく、オーナーであるあなたの「手放す勇気」なのです。
この記事では、スタッフ数人規模のサロン経営者が、次のステージへ進むために「手放すべき3つの考え方」についてお話しします。
1. 「察してほしい」という期待を手放す
サロン経営者の多くは、気配りの達人です。 お客様が少し寒そうにしていれば空調を調整し、言葉にされないニーズを汲み取ってサービスを提供する。それができたからこそ、今のお客様に愛されているのだと思います。
でも、その「察する能力」を、スタッフ採用の基準にしてはいけません。
「普通、お客様にはこのくらい配慮するでしょ?」 「見ればわかるじゃない」
この「普通」や「見ればわかる」は、オーナーであるあなたにとっての常識であって、スタッフの常識ではありません。 特に、最近の若い世代や、雇われて働く人にとって、「指示されていない業務」は「やってはいけない業務(またはやらなくていい業務)」と認識されることが多いのです。
「言語化」されていない事は伝わらない
伝えているつもりなのにスタッフが思うように動かない時は「伝わる言葉」になっていない。つまり言語化が足りていないことが多くの原因です。
スタッフにも「いい感じにお客様をもてなして」では伝わりません。
* ×「お客様をよく見て動いて」
* ○「お客様が時計を2回見たら、『お急ぎですか?』と声をかけて」
* ×「空き時間は掃除して」
* ○「施術が終わったら、AとBの棚をこのシートで拭いて」
「察してほしい」という期待を手放し、「小学生でもわかるレベルまで具体的に言葉にする」こと。 最初は面倒に感じるかもしれませんが、これが「言わなくても動くスタッフ」を育てる一番の近道です。
2. 「私と同じ情熱」という幻想を手放す
残酷なようですが、はっきり言います。 スタッフが、あなたと同じ熱量で働くことは、未来永劫ありません。
あなたは、お金の責任を全て背負い、家賃を払い、24時間365日お店のことを考えている「城の主(オーナー)」です。 対してスタッフは、決められた時間労働力を提供し、その対価として給与を受け取る「城の衛兵(従業員)」です。
親が子に注ぐ無償の愛と、ベビーシッターが注ぐ仕事としての愛が違うように、立場が違えば「熱量の種類」も違います。
100点満点の呪いを解く
あなたが100点(あるいは120点)の情熱で仕事をしているとして、スタッフに求められる合格ラインはどこでしょうか? 多くのオーナー様は、無意識に「私と同じ100点」を求めてしまいます。だから、80点の仕事をされても「あと20点足りない」と減点法で見てしまい、イライラするのです。
しかし、経営者視点で見れば、自分以外の人間が「60点〜70点」で回せる仕組みを作ることこそが成功です。 スタッフがいきなり100点を出すことはありません。まずは60点でOK。そこから育てていけばいいのです。
「私と同じ熱量」を求めると、感謝ではなく「不足」ばかりが目につくようになります。 期待値を適切に下げ、「来てくれてありがとう」「私の代わりに手を動かしてくれてありがとう」という原点に立ち返ってみてください。
3. 「私がやった方が早い」というプライドを手放す
お店をここまで育てたあなたは優秀なプレイヤーなので、スタッフがもたついていたり、クオリティが低かったりすると、ついこう思ってしまうはずです。
「私がやった方が早いし綺麗」
その通りです。あなたがやった方が早くて正確です。 ですが、あなたが現場の仕事(プレイヤー業務)を奪ってしまったら、誰が「経営」をするのでしょうか?
スタッフが失敗する機会、試行錯誤する時間を奪わないでください。 「私がやった方が早い」という行動は、短期的には正解ですが、長期的には「いつまでも私が現場から抜けられない(=売上の天井が決まってしまう)」という自分自身への呪いになります。
「任せる」ことは「信じる」こと
仕事を任せるというのは、放置することではありません。 「失敗しても私が責任を取るから、やってごらん」と、相手を信じて託すことです。
スタッフは、任されることで初めて「責任感」を持ちます。 あなたが手を出してしまううちは、スタッフはずっと「お手伝いさん」のまま。 「私がいないと回らない店」を作るのではなく、「私がいなくても回る店」を作ること。
それが、スタッフを守り、お客様を守り、そして何よりあなた自身の人生を守ることにつながります。
孤独なリーダーであるあなたへ
ここまで読んで、「頭ではわかるけど、感情がついていかない」と思われたかもしれません。 当然です。自分の命のように大切なお店ですから、妥協したくない気持ちは痛いほどわかります。
スタッフとの温度差に悩み、育成に悩み、それでも笑顔でお客様の前に立ち続ける。 そんなあなたは、本当に頑張っています。
